マスコミと数値根拠

先ほど、TV番組の1コーナーでコインロッカーの特集なるものをやっていた。

  • 追加料金なしで3日間放置すると、強制的にロッカーを開けて荷物を回収される
  • 強制回収された荷物は、保管所で1ヶ月間保管されるが、その間に回収に来ない場合は廃棄される
  • 廃棄物の中には、貴重品の類や位牌(!)、現金など、捨てるにも困るようなものが1割程度含まれる

この特集の中で、2つの数値が登場した。

  • 強制回収は1日に10件程度
  • 強制回収された荷物のうち引き取り手が現れるケースは、全体の1割程度

こういう意味のない数値を並べ立てて数値根拠とでも言いたいのだろうか。マスコミの報道に現れる数値根拠(のようなもの)は、実質意味のないものであることが多いように思う。
某あるあるの実験なんかもそうだったが、こういう数値を扱うとき、TV番組などは標本の取り方や母集団の設定の仕方がきわめてテキトーであることがほとんどである。また、割合を出すべきところで絶対数をもってきたり、その逆であったりという、数値の取り扱いを誤っているケースもしばしば見られる。
例えば、前者の「1日に10件程度」とあるが、ここでは絶対数を出してもあまり意味がない。ここでは全体のコインロッカー利用数に対してどれくらいなのかを示さないと、1日10件が多いのか少ないのか分からない。後者の「全体の1割程度」というのも、元々強制回収されるまで取りに来ないようであれば、そもそも取りに現れない人が多いのは明らかなので、ここで「全体の1割」という数値を持ってくることにそれほど意味があるとも思えない。数値だけ見て「ほとんどの人が回収に来ない」ということを強調したかったのだろうか? そういう意図だったらまあ分からないでもないが……(TV番組の雰囲気としては「1割しか取りに来ないんだ、へぇー少ないんだね」という方向だったように感じる)。


我々は、知らず知らずのうちにこういった数値の波に呑まれてしまわないように注意を払っていかねばならない。数値というのは我々に不思議な安心感をもたらすが、それすらもレトリックでいくらでも誤魔化せるものなのだ、ということを知っておくべきだろう。
もしかすると、作り手側もそのあたりを良く分かっていないのかもしれない。良く分かっていない人がマスメディアを通じて適当な数値を垂れ流し、良く分かっていない人たちがそれに翻弄されている。それだけのことなのかもしれない。勿論、由々しき問題ではあるが。


ちなみに、私も上記のことを「感覚的に」言っていて、実際にテキトーな数値根拠の登場頻度を調査したわけではないので、その点には注意されたい(笑)。